Say Loud !

Vol.2 : DON LETTS Interview 2

2011.09.08

Vol.2 : DON LETTS Interview 2

自分達独自でものを作っていく必要が、今の俺達にはあるんじゃないかな。
自分達の持つスピリットやアティテュードをどこに向わせ、
どう継続させていくかっていう命題が俺達にはある。

パンクロックドキュメンタリーフィルム「The Punk Rock Movie」の監督として知られ、
DJとしても音楽シーンに多大な影響を与え続けてきたドンレッツインタビュー後編。
さらにPodcast後半はMoholy NazyのHATCHUCKによるDJ MIXを収録。
mastering : Yukitomo Hamasaki / mAtter
www.matter.jp

TEXT

みんな何か新しいことを試そうとしているよね。

Terry Lynn - System こないだ “Tricky” に会った時に教えたら、彼は次の新しいLPに、 “Terry Lynn” をフューチャーしてた。みんな何か新しいことを試そうとしているよね。

“Terry Lynn” はチェックする価値があるよ。

こないだ “Tricky” に会った時に教えたら、
彼は次の新しいLPに、 “Terry Lynn” をフューチャーしてた。

みんな何か新しいことを試そうとしているよね。

何か訊きたいことってある?


そうだな、ドンの制作サイドについて訊きたいんだけど、
曲を創る時のことだけど....

Screaming Target - Who Killed King Tubby テクノっぽいビートにジャマイカのベースラインというコンビネーション。 レゲエというフォームをもう一歩前進させようと試みた曲。


ワ~ォ...曲制作ね。
Big Audio Dynamiteのメンバーの時は、全然演奏出来なかったからね。
キーボードに色付きのステッカー貼ってたから。

だけど、歌詞を結構書いてたよ。ミック・ジョーンズと一緒にね。
サンプリングとかループとか、ダイアログとかも担当してた。
自分でみつけた映画からとかね。

メンバーとして、何か貢献したかったのさ。

最近のおれが関わったリミックスワーク全般は、B.A.D.のメンバーの
Dan Donovanが機材面のオペレーションをしてる。

曲を創る時、先ずはベースから取り掛かる。
ベースが良くなかったら...そんな曲は興味ないね。

自分が好きになれるベースから始まって、
ビーツに、そしてその周辺をビルドアップしてくって感じかな。

とにかくベース!
Bass Line No Good....Track No Good...

音楽を聴く時、その曲自体を解体して聴いたりすることは無いかな。
ただ本能のままに聴いて、その後にプロダクションや歌詞について考えたりするけど。

先ずはその曲がどう自分に響くか。
本能的に判断はするけど、分析的になることはないかな。

美しい女性を見た時と一緒だよ。
科学反応みたいなもんさ。


おれが “Big Audio Dynamite” のメンバーだったのは知ってると思うけど、
あのグループに居れたことを誇りに思っているよ。

“Big Audio Dynamite”は、ミック・ジョーンズがクラッシュを辞めた後の’80年終わり
頃にスタートしたグループ。
あのグループはその当時聴いていた音楽を、自分達の音に反映させたものだったんだ。


ジャマイカのベースラインにヒップホップのビーツ。ミックのロックンロールギター
に、サンプルやダイアローグを被せたもの。
サンプルやダイアローグを曲中に使って、最初にヒットを記録したグループなんじゃ
ないかな。

新しいスタイルだったから、レコード会社は何が起きているのか理解していなかった。
超有名な映画からサンプルを録っても訴訟とか無かったよ。

“Big Audio Dynamite”が終わった後も、まだ表現を続けたかったから、
おれはもう一つ “Screaming Target” というグループを始めたんだ。

おれがリードシンガー。
もしかしたらそれは良いアイデアじゃなかったかも知れないけど...

まぁとにかく、今プレイしている “Who Killed King Tubby” という曲は、
“Screaming Target” を理解して貰うのに、わかり易い例だと思うんだ。

テクノっぽいビートにジャマイカのベースラインというコンビネーション。
レゲエというフォームをもう一歩前進させようと試みた曲。

アルバムでは “The Pretenders” のクリシー・ハインズをゲストボーカルに迎えてる。
バンドの基本メンバーは、おれとレオ・ウィリアムスにグレン。
ミック・ジョーンズを除いた “Big Audio Dynamite” のメンバーだった。

おれには当時それを表現する必要性を感じていた。
自分に課する能力のエクササイズみたいなものだったのかも。

今でも誇りに思える”Home Town Hi-Fi” というアルバムをリリースしたよ。
いま見付けられるのかどうかわからないけど。
まぁ、ドン・レッツの歴史のひとつさ。

今自分が興味を持つレゲエの曲の殆どは、
ジャマイカからのリリースではないんだ。

Rodney P - Riddim Killa この曲にはおれの好きなレゲエのエッセンスが詰ってる。 オールドスクールなリディムに、モダンなテクノ的フィール。

OK! 
これは “Rodney P” の “Riddim Killa” という曲を “Wrongtom” というアーティストが手掛けたもの。
“Rodney P” はロンドンのGodfather of Hiphopとして知られてるよ。

最近DJする時にはいつもプレイしてる、目下お気に入りのレゲエトラックだよ。

この曲にはおれの好きなレゲエのエッセンスが詰ってる。
オールドスクールなリディムに、モダンなテクノ的フィール。

繰り返しになっちゃうけど、今自分が興味を持つレゲエの曲の殆どは、
ジャマイカからのリリースではないんだ。

古い曲だったらジャマイカのものは今でも大好きだよ。
でも新しい曲で最も興味深いものの殆どは、どこか違う国の、何か新しいことを表現
しようとしている人々から発せられるもの。




Damian Marley & Nas - As We Enter “Damian Marley” の出現、そしてアルバム “Welcome To Jamrock” での彼の表現は、 ここ10年位のReggae Musicにおける最高の出来事だと思う。

“音楽による報道”

じゃあもう1曲掛けさせて。

“Damian Marley & Nas”

“Damian Marley” の出現、そしてアルバム “Welcome To Jamrock” での彼の表現は、
ここ10年位のReggae Musicにおける最高の出来事だと思う。

何がそんなに良いかって言うと、
再びだけど、まずベースライン。

そして彼の歌詞が本当に素晴らしい。
“何か”について語られている。

最近のジャマイカの歌詞は、大抵がどうでもいい内容ばかりだよ。

でも、“Welcome To Jamrock” の歌詞は “音楽による報道” と呼ぶに相応しい優れた内容で、
ジャマイカの日常を注視し綴ったものだった。

今ジャマイカで、ああいうコンシャスでポジティヴな表現をしているアーティストはとても少ない。
“Damian Marley” 位なんじゃないかな。

もし何か素晴らしい発言を持っているなら、その下敷きには良い音楽が弾かれるべき
だと思う。
良い歌詞なのに音がダサい曲なんてのに用はないね。

“Damian Marley” は良い例だと思うし、ジャマイカで起きている中で最高の出来事だよ。

彼が関わっているものは全部聴いたよ。
“Nas”と一緒にやっているこのアルバムでも歌詞がすごく良いね。

Mos Def - Johnny Too Beef これは “Mos Def” に、古いレゲエの曲で “Slickers” の “Johnny Too Bad” を組み合わせたもの。

自分達の持つスピリットやアティテュードをどこに向わせ、
どう継続させていくかっていう命題が俺達にはある。

掛けたい曲があるから、もうちょっとプレイさせてよ。
拍車が掛ってきたよ!

“Mos Dub”!
イギリスでも流行ってるマッシュアップの手法で作られた曲。 
異なったネタを組み合わせて1曲にするスタイル。
たまに酷いのもあるけど、巧くいってるのは素晴らしいよね。

これは “Mos Def” に、古いレゲエの曲で “Slickers” の “Johnny Too Bad” を組み合わせたもの。

“Mos Def” に “Nas” そして “Common”
おれはインテリジェンスなヒップホップアーティストとして認識しているんだけど、彼らはコンシャスな歌詞を書くよね。

HipHopは今微妙な時期を迎えてるように感じる。
歌詞に魅力を感じるアーティストが少ないというか。
“HipHop”は”HipPop”になってしまってる。

まぁでもこれはアンダーグラウンドで革命的な音楽に共通している問題でもあるんだよ。

初期はすごく興味深くても、段々コマーシャルなものとなっていくっていう過程がね。

若いアーティストはそれがクールなものであり続ける為に、
打ち消しては塗り替えていくっていう作業を継続していくべきだと思う。

“Punk Rock” も一時どうでもいいものに成り下がったけど、
素晴しく興味深いものへとみんなが引き戻したって過去があるよ。

システムや会社が「よし何となくわかった」って顔して、
せっかく面白かったものを、広告とか売り物として利用していったんだよな。

自分達の持つスピリットやアティテュードをどこに向わせ、
どう継続させていくかっていう命題が俺達にはある。

自分達独自でものを作っていく必要が、今の俺達にはあるんじゃないかな。
ビジネスマンからは剥ぎ取るだけ剥ぎ取られ、最後には何も残らないからね。

それを最高のものとして仕上げる為には、
自分が今までしてきた音楽旅行に対する深い理解が必要だと思う。

James Blake - Air Or Lack Thereof Dubstepはおれにとって良いサウンドトラックだよ。 今のロンドンのフィーリングを表現してる。

みんなジャマイカのオールドスクールなリディムが好きなんだと思う。

最近のジャマイカのリディムアルバムで、同じトラックで1枚のアルバムを構成しているのがあると思うけど、そもそも全然良いリディムじゃないんだよね。

ジャマイカのダンスホールに遊びに行っても、
1週間後、2ヶ月後、2年後には、その曲はもうプレイされていない。
すごく消費されているというか、今だけしか聴けない曲だよね。

おれにとってオールドスクールなベースライン....
例えばさっき話した “Welcome To Jamrock”もそうだけど、
あれはオールドスクールなリディムで、人々に受け入れられた曲だよね。

思うに、今現在のジャマイカの問題のひとつは....

古き良き時代、人々は音楽を奏でる方法を学ぼうとした。
でも今は、テクノロジーを購入してちょっとボタンを押したりすれば、
音楽が出来ると思いがちだよね。

でもそんなわけないんだよ。
良い物を作るには、磨き上げる様な作業が必要なんだ。

仮に、演奏をして曲を作る必要がなかったとしても、それを最高のものとして仕上げる為には、
自分が今までしてきた音楽旅行に対する深い理解が必要だと思う。

単に、Macでソフトウェアを使ったってだけじゃ良い音楽は作れない。
良いアイデアがなきゃね。

テクノロジーによって少し問題が引き起こされているよね。
Macを使えば良い音楽ができるんじゃないかってみんな錯覚してしまっている。

でもそれは違う。そこには良いアイデアが必要だよ。
それとパッション。ハートが必要なんだ。

30年前に来た時に感じた、西洋をコピーをするようなスタンスと違って、
今は音楽にも自身の興味を注いで、独自のものになっているような気がするよ。

Silent Poets ft. Terry Hall - Sugar Man “2tone” みたいな曲の焼き直しも出来たと思うんだけど、“Silent Poets” はそうじゃなかった。

“Silent Poets ft. Terry Hall” の曲をプレイしたかった理由は...

おれはかれこれ10回程日本に来たことがあり、ここに来れるのは本当に嬉しい。

日本に来るたびに何か新しい出会いがあり、日本の若者達は今特に興味深いと感じる
よ。

30年前に来た時に感じた、西洋をコピーをするようなスタンスと違って、
今は音楽にも自身の興味を注いで、独自のものになっているような気がするよ。

最もエキティングな音楽やアイデアの幾つかは、ここ日本の若者達から発信されてい
るように感じる。

それは、あらゆる音楽に対してオープンなスタンスから生まれて来てる様な気がする
よ。
昨夜 “Room” というクラブに遊びに行ったんだけれども、古いアフロなんかがプレイ
されていて。
イギリスではプレイされているのをあんまり聴かないからね。

まるで日本は世界中の音楽のキーパーみたいに感じるよ。

何か探しているものがあって、西洋で見つけられないものも
日本に来れば見つかるんじゃないかな。

日本の人達は情熱的で、音楽を大切にしているよね。
そんなに流行にばかり流されるわけでもなく。

何が心に触れるのかっていうのを基準にしているように映るよ。

音楽の持つ力を理解し、世界を少しでも良い場所にする為に人々をひとつにしようと
しているのを目にするのは、おれにとって素晴らしいことだよ。

今西洋では、そういう考え方が出来なくなっているように思う。
音楽はコマーシャルなものになってしまって、まるでスニーカーや車を売る様なもの
だよ。

古い様式を存続させるというのは大事なことだと思う。

別に大金を持っていなくても学校に行っていなくても、
俺達みんなが平等にその輪の中に居てその一部となれる。

もしアイデアやモチベーション、そしてパンクアティチュードを持っていれば、
君はこの音楽旅行の歴史や遺産の一部になることが出来るんだ。

世界をほんの少しだけ良いものにしたいだけだよ。

“Silent Poets” の曲からそういう感情を感じる?

“Silent Poets” はきっと”The Specials” や “Terry Hall” のファンだと思うんだけど、
テリーに参加して貰う時に、彼らは今まであるものとは違う何かを創造しようとした
んじゃないかな?

“2tone” みたいな曲の焼き直しも出来たと思うんだけど、
“Silent Poets” はそうじゃなかった。

“Silent Poets” というグループのことは正直言って良く知らないんだけど、
彼らの音楽からそう聴き取ったよ。

ただ西洋をコピーしたんじゃなくて、少なくとも、
何か新しいことを試みたと言えるんじゃないかな。




End...........

September 1st, 2010

2010年9月来日時のインタビュー

(Podcast後半はMoholy NazyのHATCHUCKによるDJ MIXを収録 )

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