House in Chofu
- プロジェクト名: 調布の家
- 竣工日: 2022.09
- 所在地: 東京都調布市
- 担当領域: インテリアデザイン
- 用途: 住宅
- 延床面積: 52.4㎡
- プロジェクトチーム: 岡部修三、益留亜弥 (Design)、上川聡 (Management)
- 施工: Yamazaki Works
- 写真: 志摩 大輔
少しずつ手を加えながら住み継がれてきた対象物件は、周囲に馴染んだ木張の外壁と、丁寧に手を入れたてきた様子が伺えるグリーンの板金が、なんとも愛嬌のある存在であった。そんな一軒家がひとつの役割を終えたタイミングで引き継ぎ、賃貸物件として再生させるプロジェクト。
延床50平米ほどの既存の内部空間を、水回りと寝室からなるコンパクトなプライベートスペースと、中庭につながるそれ以外の部分をパブリックスペースとするシンプルな構成を基本として、パブリックスペースの上部にあたる2階部分を7平米ほど解体して減らし、ハイサイドとしての光取りの窓を追加することで、生活の中心となる1階のパブリックスペースに開放感とやわらかい明るさを実現した。光を取り込むための空間とした2階の壁面は、光を受けて見え方が変化する塗料を用いることで、時間や天候によって変化する光をより印象的にする。
パブリックスペースは家の中にボックスを入れ込んだように、ラワン材で包み込むようなデザインとしていて、フィニッシュを使わない工法や、窓枠の収まり、目地への細かな配慮、端部の厚みに関する考え方などによって、包みこまれたような感覚を持てる空間を目指した。同時に、既存の建具および建具枠を転用して間仕切りとすることで、厳格な構成によってできた空間を、元々そうであった場所をうまく活用しているような、そんな居心地として共存させられればと考えた。中庭は、更新した波板の扉を介して外部とつながり、その動線を肯定的に捉えることで、この場所がただ住むだけにとどまらない可能性を持てばとも考えている。
外観は、基本的には街にしっかり馴染んだ状態を活かしながら、部分的に最低限の補修を行い、ほんの少しだけ新しい要素を加えながら、バランスを整えている。具体的には、雨戸用の戸袋の塗装、鮮やかなブルーにこだわった波板、既存サッシの奥に見える上下塗り分けられたユニットバスの裏側、トイレ足元の開口部を塞ぐ波板等、一見どこに手を入れたかどうかわからない様な差異を、パッチワークのようにバランスを取っている。
今後ますます進行する人口減少と、それに伴う住宅の終い方は今後多くの課題を抱えているが、見方を変えれば、一人当たりの生活の面積が増えることを意味しているとも言える。そうした社会の状況を見据えつつ、その課題を豊かさに変換しながら、街の記憶を繋ぎ、少しだけ寿命を延ばすような、そんな場所とフォーマットを提供できればと考えた。