House in Kugenuma kaigan
- プロジェクト名: 鵠沼海岸の家
- 竣工日: 2022.08
- 所在地: 神奈川県藤沢市
- 担当領域: 建築デザイン
- 用途: 個人住宅
- 延床面積: 128.83㎡
- プロジェクトチーム: 岡部修三、吉川友司 (Design)、上川聡 (Design &Management)
- 施工: 喜立建設
- コラボレーション: ANDO Imagineering Group (Structure design)
- 写真: 志摩大輔
生活のための拠点であることはもちろん、その一部とも言えるサーフィンを楽しむための拠点を求めて長年探して出会った土地に、夫婦のための住居を計画した。
海に近い好立地の宿命として、津波のリスクは目を逸らすことはできない。地震国に暮らす私たちにとって、3.11を経験した今、その備えをどう考えるか、という議論は、より切実なイシューと言える。対象地は、ハザードマップに位置付けられるエリアであったため、なおさらである。“備え”と表現するようにそれは思想に近いもので、ここでは、万が一の津波に住居が襲われた場合、その水が押す力とその高さ、そして水が引く力に耐えうる構造を目指すこととなった。海の魅力と自然の力を十分理解する夫婦の判断に、想定される津波を安全に支える基礎として、1階天井(2階床)までをRC造として、生活の中心となる2階を木造とすることで応えることとした。
RC造の1階半分は半屋外のガレージとして、車はもちろん、屋内での機械作業や、アウトドア、マリンスポーツを楽しむ道具置き場に、もう半分は屋内の寝室と水回りとして、外から帰ってきてウェットスーツのまま洗面までアプローチできる導線としている。2階は1階とは対照的な木造による空間で、天井高を3M確保した大きな空間がそのままバルコニーにつながる構成としていて、周辺環境を読み解き、リズムとプロポーションに留意して決められた開口部と合わせて、プライバシーと開放感が両立する空間を目指した。
表から見える開口部を制限し、極端に削ぎ落とされたシンプルな外観は、自然を楽しみながらも適切な距離を保とうとする施主のアイデンティティそのものと言える。性能としても、十分な断熱性能と気密性能を持つことで、静かで快適な環境を確保するなど、エリアにおける開放的な建築の特徴からするとその存在は一層際立つ。まさに、現代的に自然と共存する、基地のような住宅となった。
