Komorebi Home Care Clinic
- プロジェクト名: Komorebi Home Care Clinic
- 竣工日: 2025.11
- 所在地: 福岡県福岡市
- 担当領域: インテリアデザイン
- 用途: クリニック
- 延床面積: 86.9㎡
- プロジェクトチーム: 岡部修三 (Design)、上川聡 (Design &Management)
- 施工: ジーク
- 写真: 中矢昌行
計画当初から共有されていたイメージとして、森とその中で感じられる「こもれび」がある。ここで言う「こもれび」とは、心地よさやあたたかさ、そして人が自然と集う場所の象徴であると同時に、常に揺らぎ、同じ状態が二度と訪れないことの象徴でもある。固定された正解を持たず、一人ひとり異なる人生に向き合う在宅医療の姿勢とこのイメージを重ね合わせながら、それを体感できる環境を目指した。
この拠点は、車で30分圏内を対象とする在宅診療チームのステーションであり、医療資材や機材を管理する物理的な拠点であると同時に、情報の蓄積と共有を行う知的な拠点でもある。日々の出入りは多く、扱う荷物も多い。その現実的な条件を前提としながら、単なる作業の場ではなく、思考が巡り、経験が蓄積されていく、そんな環境を求めた。
まず、対象地を必要な機能ごとに分けるように、緩やかな曲線壁によって三つのレイヤーに区分。そこに生まれた空間へ必要な機能を割り当てていく形でプランニングを進めた。空間のレイヤー感を意識することで、領域の確保と奥行き感の両立を図っている。曲面壁を製作上分節して検討する過程で、その隙間から差し込む光が、まるで「こもれび」のような表情を生み出す可能性に気がついた。一定のピッチとルールで分節された曲面壁の両面には、医療資材や資料、記録などを収めるための棚を密に設え、日々増え続ける情報を受け止める装置とした。サイズや用途に応じたいくつかのバリエーションを持たせることで、その時々のニーズに合わせて柔軟に組み替えられる構成としている。
分節された壁は、要素ごとに素材を切り替え、その隙間から入り込む光は、金具のシルバーと相まって静かに煌めきを生み出す。それぞれの棚には、外部で得た知識や経験が持ち帰られ、共有される場として機能し、拠点内にゆるやかな循環を生み出している。空間の中心に据えたこの棚は、最小限の手数で思想と「こもれび」を体現するための装置である。そして、今後増えていく在宅医療の拠点同士をつなぐハブとしての役割も、期待している。
人生の在り方が多様化する現代において、「治す(Cure)」ことだけが医療のゴールではない。病気と向き合うことに加え、その人らしい暮らしや人生を支えること——すなわち「Care」の視点がより重要になる、とはクライアントの言葉。この拠点が、同時代を生きる医療者たちの眼差しを支え、静かに後押しする環境となることを願っている。





























