+81 Gallery Tokyo
- プロジェクト名: +81 Gallery Tokyo
- 竣工日: 2022.06
- 所在地: 東京都渋谷区
- 担当領域: インテリアデザイン
- 用途: ギャラリー
- 延床面積: 94.2㎡
- プロジェクトチーム: 岡部修三、益留亜弥 (Design)、上川聡 (Management)
- 施工: YeT
- 写真: 髙橋健治、若林雄介、竹之内佑幸
- ウェブサイト: https://plus81.gallery
話は少しそれるが、この2022年は、世界的な金余りに起因するアートバブルがさらに激しくなり、この日本においても、現代アートがいよいよ投機対象となる気配を感じずにはいられない。それが本質的なものかどうかはここでは置いておくが、そうした時代背景も含めて一つのタイミングと捉え、単なるホワイトキューブではなく、アーティストの表現を引き出す、多様で情報量の多い背景がふさわしいと考え、100平米弱のコンパクトな場所に3つの異なる性質の場所を作ることにした。
1つ目は1階のメインギャラリーで、通りに面して全面がガラス張りの明るい空間を素直に生かしつつ、360度回転する壁によるショウウインドウと、移動 / 取り外しできる壁を計画することで、その組み合わせによって外部と内部も含めて多様な関係性を生み出す空間とした。2つ目は2階のサブギャラリーで、1階とは対局のフラットかつ暗めの空間で奥に編集スタジオがある。3つ目は、2階のサブギャラリーを通過して開口部をくぐった先にある通路状のギャラリーで、表の通りに向かった展示が可能なスペースとなっている。
話は再びそれるが、対象地は、原宿にとって重要な一時代を築いた「文化屋雑貨店」の跡地である。それが理由と言うわけではないが、物件を見たとき直感的に、この場所に蓄積した過去の痕跡を一つずつ肯定していくように、ディテールを積み重ねることが面白いと感じた。力学的には合理性のない、柱と梁、何重にも張りましされた壁と床、それらは、それぞれの端部でちょっとした違和感のある収まりとなるが、それを受け入れ、その上でそのずれ具合を場所場所で整理するようにデザインすることとした。壁の端部の曲面や、意味がありそうな丸型の開口、既存の手すりを活かしたことによって少しだけ踊り場にはみ出す手摺、Mバーに包まれたダクトレール、スイッチ群をカバーするアクリルボックス、構造金物を避けつつ重なるガラス間仕切り、既存の換気扇へのカバー。こうした、納まっているとも納まっていないとも言える、ただ明確な意図の上で決定されたディテールの集積が作る空間。
このカルチャーを見守り続けた場所と記憶が、このタイミングで繋がれ、そして新しいカルチャーにつながっていくことを期待している。