CIVIC CREATIVE BASE TOKYO
- プロジェクト名: シビック・クリエイティブ・ベース東京
- 竣工日: 2022.10
- 所在地: 東京都渋谷区
- 担当領域: インテリアデザイン
- 用途: スタジオ、ラボ、ギャラリー、etc.
- 延床面積: 491㎡
- プロジェクトチーム: 岡部修三、進藤耕也 (Design)、上川聡 (Design &Management)
- 施工: 乃村工藝社
- コラボレーション: HAUS (VI direction)、いすたえこ (Art direction)
- 写真: 長谷川健太、ただ
- ウェブサイト: https://ccbt.rekibun.or.jp
「東京文化戦略2030」を受け、アーティストやクリエイターをはじめ、あらゆる人が ”シビック・クリエイティブ” を発揮するきっかけとなる施設を目指して、①広く創造性に触れるきっかけに繋がり、②多様な活動の舞台となるフレキシブルさを持ち、③文化を深めるコミニティ形成につながる環境、をコンセプトとして読み解き、設計を進めることとした。
対象地は、渋谷の公園通りに面した東武ホテルの地下2階で、元々宴会場として利用されていた場所。通りから直接アプローチできる導線をメインとして、ストリートの延長のような関係性を重視した。その先にある共用部の廊下から、中の様子が伺えるようにすることで、一見敷居が高く感じるメディアアートに触れる、きっかけにつながるオープンな空間構成を心がけた。元宴会場としてのポテンシャルを最大限生かして、来客導線とサービス導線を明確に分離。既存の可動間仕切りを再利用して、10のブロックに分けた平面計画によって、組み合わせによるフレキシブルな活用を実現した。国際的なシンポジウムから、大学や企業と連動したレクチャー、子供向けワークショップまで、地域、肩書、世代を超えて多様な活動の舞台となる寛容な空間を目指す。
あとは如何に魅力的で、活用したくなる空間とするか、ということになる。基本的に、公共的な空間に求められる質と、クリエイティブを刺激する空間の質の相性は良くない。加えて、求められたフレキシブルさというのは、そのまま機能として読み込むとフラットな特徴のない空間に繋がりかねない。そう思いながら、初めて現地を訪れた際に宴会場として使われてきた対象地を見て、これは面白いと思えたことがデザインのきっかけとなった。作品制作および、展示のための空間において、基本的に主役は作家もしくは作品である。その前提の上で情報量の多い既存空間を肯定的に捉え、宴会場としてデザインされた装飾に対し、間引く/残すの判断を重ね、複雑さの先にあるワクワク感を求めることとした。残した装飾はルールに従ってグループ分けして多様なグレーで塗り分け、床は使い方を意識しながらブロックごとに色を微妙に切り替えるなど、多様な活動の背景としてのプレーンさと、創造性を刺激する(単純なホワイトキューブではない)ここにしかない環境が両立した状態を目指した。
CCBTのビジュアルアイデンティティは、デザインスタジオHAUSによる、アイデンティティを作る仕組みのデザイン。誰でも扱えるソフトウェアによって、シンプルな図形の組み合わせで書体やアイコンが生成可能となる。サイン計画においては、その生成のベースにあるグリッドを構成要素として読み解き、共通のルールとスケールを持って空間に実装。そこから生まれた幾何学によって表現される各要素と一体的に空間として体現できるようにした。公園通りから覗き込むと見える滝のあるテラスには、アイデンティティの延長として、椅子となるブロックを提案。気分で形を組み替えることができ、興味を持って覗き込んだ際に期待感につながる仕掛けとした。
”芸術文化は新たな価値の発見をもたらす” _プロジェクト概要書より
カルチャはいつも辺境から生まれる。そして、それが継続し広がっていくことで、結果として歴史と接続する。混沌とした時代だからこそ、社会がそんなカルチャを公的に下支えする場所が、都市には必要だと思う。渋谷の中心とも言える立地と、隠れ家のような都市の奥行きを感じる通りとの関係性を読み解き、創作の場 (ラボ) と展示の場 (スタジオ)を隣接させることで、アジトのような(しかし、開かれたマインドの)環境を目指した。