House in Shimokitazawa
- プロジェクト名: 下北沢の家
- 竣工日: 2025.01
- 所在地: 東京都世田谷区
- 担当領域: 建築デザイン
- 用途: 個人住宅
- 延床面積: 99.68㎡
- プロジェクトチーム: 岡部修三、益留亜弥 (Design)、上川聡 (Management)
- 施工: 相川スリーエフ
- コラボレーション: ANDO Imagineering group (Structure Design)
- 写真: 長谷川 健太
コロナ禍を経て、働き方のバリエーションは確実に広がった。そして、その延長にある暮らしも当然、同時に変化を求められている。家で仕事をする機会が増え、子供の成長も相まって、手狭になった住まいを考え直すタイミングで、対象の敷地に出会った施主から相談を受けた。
家族で暮らす家を考える場合、それぞれの個室と少しばかりの仕事/趣味のスペースを考えると、100平米前後が必要となることが多い。都心においては、そうした広さを確保できるマンションは極めて少ないため、床面積を確保することが、都心に家を建てる根源的な動機としてある。不動産会社の土地の販売は、そうしたニーズを見越した分割となっていることが多く、対象地はまさにそうしたサイズだった。読み解くにつれ、まずは各種制限の中で、最大限の気積を確保することが正しいと素直に思った。
そうすると次は、その気積をどう空間として分けるか、と言う話になる。生活に必要な要素を整理して、それらの組み合わせを考える中で、何より、家族が集まる空間はできる限り広がりを感じるひとつながりの空間が良い、と言う結論になった。日照と広さを最も確保できる2階レベルに、敷地条件的に許される最大限、ひとつながりの空間として、家族や友人と集まったり、ご飯を食べたり、本を読んだり、仕事をしたり、絵を描いたり、思い思いに過ごせる場を作る。特に、食事を通じたコミュニケーションを大切にするライフスタイルから、キッチン/カウンター/みんなの居場所 の3つの要素の関係性を読み解き、床と家具を一体的に操作してレベルを計画。制限いっぱいの吹き抜けと整理された開口部を通して、季節や時間を感じながら、思い思いの時間を過ごす環境とした。テラスとのつながりは、境界を45度程度南側に振ることで、室内との連続性を持たせながら、周辺に対して抜けのある奥行きの体感と、プライバシーを両立。吹き抜けを十分確保しながら、その先のスペースには3階として最小限のワークスペースを設け、ベンチを介して片持ちの鉄骨階段でつないだ。相互に気配を感じつつ、しっかりとプライベート空間として成立するように配慮されたワークスペースは、周囲の街並みが一望できる特等席でもある。
地上レベルには、前面道路から最小限のスペースを駐車場として確保して、機能的に寝室と水回りを配置。めいいっぱい確保した2階の平面計画がオーバーハングする形で、雨や日差しを防ぐひさしとして機能する計画としている。寝室は、子供の成長に合わせて部屋を分けたり繋いだりする想定として、家族構成の変化に対応できるように配慮している。エントランススペースから一階の壁面全体に計画された家族共有の収納は、居室への扉と合わせて枠を消すディテールにこだわり、家の中でのプライベートレベルの切り替えに、メリハリを生み出している。確保された気積を最大限活かすため、断面はトレードオフするように緻密に計画され、段差一段を一つのモジュールとして、階段も含めて統一のディテールとすることで、空間にリズムと秩序を与えている。そうして計画された気積は、その狭間/ずれといった余白を生み出すが、それらをプロポーションを整えながら内外で活かすことで、体験に自然な奥行きやリズムを与えたいと考えた。
環境をデザインしようとする場合、すでにそこにある環境と求める条件の重なる状態を求めて、検討を積み重ねることを重要視している。特に住宅は、求められるアクティビティをできる限り多く受け止める環境でありたい。そうすることで、一見普通に見える、ただ、結果としてそこにしかない、固有の環境を求めたいと考えている。加えて住宅は、その環境を包み込む性能を適切に設定することにこだわりたい。それは、視覚的に認知できるものではないが、日々の生活に無意識のうちに作用する、そんな環境を作りたいと考えている。



























