Mustakivi
- プロジェクト名: Mustakivi
- 竣工日: 2022.02
- 所在地: 愛媛県松山市
- 担当領域: インテリアデザイン
- 用途: ギャラリー、店舗
- 延床面積: 88㎡
- プロジェクトチーム: 岡部修三、進藤耕也 (Design)、上川聡 (Management)
- 施工: 植創
- コラボレーション: 野田竜平 (Graphic design)
- 写真: 曽我部洋平
- ウェブサイト: https://www.mustakivi.jp/
ギャラリーの企画に応じたフレキシブルな空間として、同時にブランドの旗艦店として今後展開するタッチポイントにおけるブランドアイデンティティの構築につながることを意識して、変化や移動が可能な家具とそれらを構成するマテリアルを中心にデザインすることとした。壁面と床面を展示のために極力自由な状態で保つ必要性と、垂直方向の展示と相性が良いプロダクトが多いことから、ガラス張りのファサード面にできる限り存在感を消した什器をデザインして、Mustakiviらしい色や柄が並ぶショーケースのような壁面を計画し、同時にファサードとした。フレキシブルさと空間の緊張感の共存を求めて、基本的な寸法は既存の環境にあるモジュールと連動する形で決定している。既存の、構造材をそのまま露出したざっくりとした天井とラフな研ぎ出しの床を意識しつつ、ブランドにふさわしい、存在感のあるニュートラルな背景としてのバランスを求めて、ただの白以上の引き立て役として、染色した上でコーティングを施したMDFをメインの素材として採用した。
壁面以外は、できる限りただ箱を置いただけ、という状況を目指して、ブランドアイデンティティとして設定したMDFを使って(1500×750×700)の一つの箱型のモジュールを基準に複数置くだけの構成とした。MDFは板材だが、取り合う角をしっかり留め加工とすることで、元々そういう“かたまり”があったかのような佇まいを求めた。ガラス面の什器は、あえて既製のシステムを使いつつ、通常、力学的な合理性と経済性によって加わるニュワンスを消去し、より単純な直線を基本にしたディテールとした。加えて、あえて棚板のガラスより少し深めのそれだけ見ると納まっていない寸法設定としたり、空間と馴染む微妙な(見方によってはほとんど既製品と変わらない)グレー色の特注としたり、言われないと気がつかないような細かな操作を積み重ね、印象をコントロールしながらも、デザインの気配を消せないかと考えた。
店舗の設計に先行して、「Mustakivi」ブランドのリニューアルに関わるようになり、数年前から石本藤雄のデザインの現場、そして日常に立ち会う役得を得た。その作品に関してはいうまでもないが、日々の生活における独自の視点とその解像度の高さには本当に驚きと共感が多い。独自の選美眼とも言える日常に対するまなざしは、まさに新しい”よろこび”につながる気づきを与えてくれる。そんな気づきの場にふさわしい、意図のある”そのまま”な状態の空間を目指した。石本藤雄の今を感じることができるこの場所が、どう使いこなされていくか、楽しみでしょうがない。